SD70シリーズと言えば、北米を代表する名機関車の1つに数えられるでしょう。SD60系統の流れを汲む初代SD70に始まり、交流駆動を採用したMAC、そして環境規制に対応した最新の「Tier 4(T-4)」まで、30年以上にわたり製造が続けられ、その総数は今なお増え続けています。そんなSD70シリーズの黎明期にあたる初代SD70には、外観が瓜二つな「SD75」という兄弟機が存在します。
現在までに5,700両以上という膨大な数が生産されているSD70シリーズにあって、総生産数がわずか283両に留まったSD75シリーズ。一体、この両者にはどのような違いがあったのでしょうか。
もともとSD75は、SD70(4,000馬力)の出力を4,300馬力へと引き上げ、当時台頭していたGE社のC44-9W(4,400馬力)に対抗すべく投入されたモデルでした。エンジンはSD70同様の710系(16-710G3B)を搭載していますが、300馬力の上乗せを狙うべく、ソフトウェアによる燃料噴射の効率化、ターボチャージャーの過給圧アップ、さらには定格回転数の引き上げといった、悪く言えば「小手先」の最小限の改良でハイパワーを絞り出したのです。
その結果、燃費の悪化や信頼性の低下という代償を払うことになり、大口の顧客はCN(SD75Iを175両)と、BNSF(ATSF発注分を含むSD75Mを76両、SD75Iを26両)などに留まりました。特にBNSFにおいてはハード・ソフトの両面でトラブルが頻発し、ひどい時期には在籍車両の半数以上がメンテナンスで留置されるという有様だったと言われています。結果的にBNSFはSD75の多くを手放し、大量導入したCNは必死で改良を加えることになりました。
その後、2020年代にかけて早期退役させられたSD75に対し、AC(交流駆動)機へと生まれ変わらせるリビルドプログラムが、プログレス・レール(EMD)やNSの手によって行われます。駆動方式の交流化、エンジンのオーバーホール、コンピュータの刷新、そして最新の安全基準を満たしたキャブへの換装などを経て、SD75ACCとして復活を遂げました。――無理なパワーアップで自滅し、のちに現代の技術で救済される。どこかで聞いたことのある話ですね。あのやたらと長いSD70を見つめながら、そんな歴史の皮肉を思わずにはいられません。
とはいえ、このSD75におけるエンジン周りの苦い失敗があったからこそ、のちに無理なく4,300馬力を発揮する「SD70M-2」や「SD70ACe」といった完成形が生み出されたのも事実です。そういった意味では、SD75は「少しだけ生まれるのが早すぎた名機」、あるいは「次世代SD70シリーズのハイパワー化に向けた、壮大なプロトタイプ」だったと言えるのかもしれません。
ちなみに、SD80/90MACの話(SD9043MACが更新を経てSD70ACuへとシリーズ編入された件)と比較すると、SD75がそのままの形式名を維持している理由はSD70ACuのようにエンジンや周辺機器ごと載せ替えたケースとは異なり、SD75ACCはエンジン自体をSD75からそのまま引き継いでいます。そのため、SD70用とは一部の内部パーツが異なることから、整備・管理の面で別形式として扱った方が現場での都合が良いのです。また、エンジン本体はもともと4,300馬力を発生するポテンシャルを有しているため、制御コンピュータ側としては「直流駆動から交流駆動(AC)へ変わったこと」さえ認識できれば事足ります。したがって、形式名も「AC」を付加するだけで実務上まったく問題がありません。
模型は、BNSFのSD75Iです。この機関車はATSF(サンタフェ鉄道)との合併後に増備された車両ですが、BNSFの制式塗装が決まるまでの暫定的な措置として、伝統の「ウォーボネット塗装」がそのまま採用されました。そのため外観はATSFそっくりですが、ノーズと側面のロゴだけが「BNSF」に書き換えられているのが特徴です。
なかでもこの「ロードナンバー8301」は、SD75シリーズとしての最終生産機であり、同時にウォーボネット塗装を身にまとって落成した歴史上最後の機関車でもあります(※これには諸説あり、GE社のC44-9Wの799号機が最終機であるという説もあります)。
SD70との、唯一と言ってよい外観上の識別ポイントが、車体右側に見られる「スクエアな出っ張り」です。エンジンが4,300馬力へとパワーアップされた際、大型化されたターボチャージャーを収めるため、その部分のボディが通路側へとせり出しているのです。
それ以外はSD70と瓜二つです。
ウォーボネットの鮮やかな赤一色に塗られたノーズにおいて、防振キャブの境目に走る黒いゴムシールが強烈なアクセントとして目を引きます。















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